最近ふらつく・つまずくのはなぜ?安定して動くための身体の仕組み
何もないところで足が引っかかることが増えた。靴下を履こうと片足になったら、思ったよりふらついた。運動中、以前はできていたつま先立ちや方向転換が安定しない…
そんな小さな変化に気づくと、「筋力が落ちたのかな」「年齢のせいだろうか」と気になることがあります。
実際、脚の筋力や身体の変化が関係する場合はあります。しかし、私たちが立つ、歩く、動きを切り替えるときの安定は、筋力だけでつくられているわけではありません。目や耳、足裏や関節から届く情報を受け取り、状況に合わせて身体を調整する働きが重なっています。
では、日常のふらつきやつまずきを、どのように捉えて、見直していけばよいでしょうか。今回は「ふらつきの正体」について、身体の仕組みから考えていきたいと思います!

「ふらつく」には、さまざまな感覚がある
ひと口に「ふらつく」といっても、実際に感じていることは人によって異なります。
- 立ち上がったときに、目の前が暗くなる
- 自分や周囲が回っているように感じる
- 足元が安定せず、まっすぐ歩きにくい
- 片足になった瞬間に、身体が傾く
- 足が上がりにくく、段差や床につまずく
- 立っているだけでも、身体が揺れるように感じる
このうち、目の前が暗くなる立ちくらみ、回転しているように感じるめまい、動作中に姿勢を保ちにくい状態は、それぞれ同じものとは限りません。
たとえば、立ち上がった直後に起こるのか、歩いている途中に起こるのか、片足で身体を支えたときだけ感じるのかによって、確認すべき点は変わります。
睡眠不足や水分不足、服薬、視覚や耳の働き、筋力、関節の動かしやすさなど、さまざまなことが関係する可能性があり、感覚だけから原因を決めることはできません。
身体の安定は、筋力だけでは決まらない
身体が安定する仕組みについては、感覚系、中枢での情報処理、筋力などを総合的に考える必要があります。
周囲の状況を捉える「視覚」
目から入る情報は、身体がどちらへ傾いているのか、床や障害物がどこにあるのかを判断する手がかりになります。暗い場所や足元ばかりを見ている場面では、普段とは安定感が変わる人もいます。
頭の動きや傾きを捉える「前庭感覚」
耳の奥にある前庭器官は、頭の動きや傾きに関する情報を伝えます。歩きながら振り返る、泳ぎながら顔を上げるなど、頭の位置が変わる場面でも姿勢を調整するために使われます。
身体の位置を伝える「体性感覚」
足裏の圧、筋肉の伸び縮み、関節の角度などからも、私たちは身体の位置を感じ取っています。足元を見続けなくても立ったり歩いたりできるのは、こうした情報があるためです。
脳はこれらの情報をまとめ、足首、膝、股関節、体幹などへ調整の指令を出します。どれか一つだけが働けばよいのではなく、そのときの環境や動きに応じて使い方を変えています。
つまり、身体が安定するとは、まったく揺れないことではありません。小さく揺れながらも、倒れない範囲へ戻り、次の動きへ移ることができるような柔軟な状態を指します。
見た目の形と動きやすさの違いについては、「姿勢がいいとはどんな状態?背筋を伸ばすだけではない、自分に合う姿勢の見つけ方」でも紹介しています。

身体を安定させるために必要なこと
前章で紹介した身体の仕組みが働いていても、関節を動かせる範囲や身体を支える力が不足していると、ふらつきやつまずきにつながることがあります。
とくに、普段から運動している人は、走る、持ち上げる、ポーズを保つといった動作を繰り返す一方で、日常や競技であまり使わない方向への動きが少なくなっている場合があります。
安定して動くために確認したいのは、主に次の4つです。
身体が必要な範囲まで動かせること
足を前へ運ぶためには、股関節や膝だけでなく、足首も動く必要があります。
たとえば、脚を持ち上げる力があっても、足首を曲げてつま先を上げにくければ、小さな段差や床へ足先が引っかかることがあります。また、股関節が動かしにくい場合、無理に歩幅を出そうとして腰や膝で動きを補うこともあります。
柔軟性を高めることだけが目的ではありませんが、歩く、走る、方向を変えるといった動作に必要な範囲を、無理なく動かせる身体の使い方を獲得することが大切です。
片脚でも身体を支えられること
歩行やランニングでは、左右の脚が同時に床へついているとは限りません。一歩進むたびに、片方の脚で身体を支える瞬間があります。
そのときに、足首、膝、股関節、体幹などが連携して働きます。筋力トレーニングをしていても、両脚で力を出す運動が中心の場合、片脚で支える動作には慣れていないことがあります。
筋肉の強さだけでなく、体重を片方の脚へ移し、次の一歩を出すまで姿勢を保てるようになることが必要です。

必要な筋肉を適切な順番で使えること
筋肉量があっても、目的の動作でその筋肉を使えるとは限りません。
段差を上るときは、足を上げ、床へ置き、体重を移し、身体を持ち上げるという流れがあります。どこかのタイミングが遅れたり、特定の筋肉だけで動作を補ったりすると、身体が傾く、足先が引っかかるといったことが起こります。
安定した動きに必要なのは、強い筋肉を一つつくることではなく、複数の筋肉を動作の流れに合わせて使うことです。
疲れても動作が保てること
運動後半など身体的に疲れている時は足が上がりにくくなったり、着地が乱れたりすることがあります。
これは、動作を支える筋肉の疲労に加え、身体を動かすタイミングや姿勢を調整しにくくなっている可能性があります。
安定して動くためには、一度だけ正しく動けることではなく、今の体力に合う時間や回数の中で、必要な動作を繰り返せることも大切なのです。
運動習慣があるからといって、すべての方向へ身体を動かせるとは限りません。筋力の強さだけを見るのではなく、動かせる範囲、片脚で支える力、筋肉を使う順番、疲れたときの変化まで確認することが、安定した動きにつながります。

日常で取り入れられる対策
ではどうしたら身体を安定しながら日常生活や運動を快適に続けられるのでしょうか。ここではいくつか対策をご紹介していきます。
身体の状態を確認する
1日の始まりや身体を動かす前に、その日の身体を確認する時間をつくります。
足首をゆっくり曲げ伸ばしする。股関節から脚を前後へ動かす。浅くしゃがんで、足首、膝、股関節がどのように連携するかを見る。軽く歩き、左右の足の運びや着地を確かめる。
いつもより動かしにくい場所はあるか、固まっている箇所はないか、ストレッチや身体に触れてみると気が付きやすいです。

脚を上げるだけでなく、足先まで動かす
つまずきが気になると、「脚を高く上げよう」と考えがちです。しかし、足先が床から離れるためには、股関節や膝だけでなく、足首の動きも関わります。
壁や安定した机に軽く手を添え、次のような動作を無理のない範囲で行います。
- かかとを床につけたまま、つま先を上げ下げする
- 膝を軽く上げ、足首も一緒に動かす
- ゆっくり足踏みし、左右へ体重を移す
- 小さな一歩で前後や左右へ動く
- 歩く、止まる、方向を変える動作を丁寧に行う
回数よりも、足先まで動いているか、身体が大きく傾いていないかを確認します。
片足で支える力を実際の動作につなげる
歩く、走る、階段を上るといった動作には、片方の脚で身体を支える瞬間があります。
筋力トレーニングでは、スクワットやヒップリフトなどで脚やお尻を鍛えるだけでなく、その力を歩行やランニングの動作へつなげることが必要です。
片足立ちを長く続けることだけが目的ではありません。支える、次の一歩を出す、着地するという流れを安定して行えることを目指しましょう。
デスクワーク中にも動きを入れる
運動している時間だけ身体へ目を向けても、仕事中に何時間も同じ姿勢が続けば、運動を始めるときに身体の動かしにくさを感じることがあります。
作業や会議の区切りに立つ。少し歩く。足首を動かす。肩や股関節を無理のない範囲で動かす。こうした短い動作を入れ、座った状態から運動へ急に切り替えないようにします。
仕事のあとに運動する場合は、最初の数分をウォーミングアップに使い、歩き方や脚の上がり方を確認してから負荷を高めるようにしましょう。
疲れてフォームが崩れる前に負荷を調整する
つまずきやふらつきが運動の後半に増える場合は、距離、速度、回数、休憩の取り方を見直します。
「決めたメニューだから」と続けるのではなく、足が上がりにくい、着地が乱れる、同じ場所へ負担を感じるといった変化を感じたら、負荷を下げたり、フォームに集中する練習に変えましょう。
運動を短くする、歩きへ切り替える、別の種目に替える、休養することも、次の運動を続けるためのトレーニング判断です。
自分で分からない動きは第三者と確認する
慣れている動きほど、自分では力みや動作の偏りに気づきにくいものです。
整体などで、普段の姿勢や関節の動かしやすさ、身体の使い方を第三者と確認することも、自分の状態を知るよい機会になるかと思います。

まとめ|ふらつきは、今の身体を知るためのサインになる
身体の安定は、背筋を伸ばした形を保つことでも、力を入れて固め続けることでもありません。周囲と身体の状態を感じ取り、動きに合わせて力の入れ方を変え、崩れそうになったときに戻れることによって支えられています。
以前と違うふらつきやつまずきに気づいたら、年齢や気合の問題で片づけず、どの場面で、どのような変化が起きているのかへ目を向けてみてください。
普段の些細な変化をきっかけに自分の状態に気づくことは、その身体と向き合って適切にケアをしていくための入口になります。
好きなことを楽しめる身体へ!是非、普段の生活で活かしてみてください!


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