ダイエットのために運動する前に|無理なく動ける身体をつくる考え方
痩せたいと思ったとき、「毎日走ろう」「きつい運動を増やそう」と考える人は少なくありません。実際に、ランニングや筋力トレーニング、ヨガなどを始める人もいるでしょう。
しかし、始めた直後は頑張ることができても、次第に膝や腰に負担を感じたり、強い疲れが残ったりして、続けることがつらくなる場合があります。
その原因を「体力がないから」「意志が弱いから」と考えて、さらに運動量を増やしてはいないでしょうか。
運動の効果を活かすためには、距離や回数を増やす前に、その運動で必要な筋肉を無理なく使える身体になっているかを確認することが大切です。動かしにくい場所や十分に力が発揮できない場所があると、別の部分で動きを補い、一部へ負担が偏る可能性があるためです。
では、「使える身体/筋肉」とは、どのような状態を指すのでしょうか。また、その状態はどうすればつくれるのでしょうか。
今回は、ランニングやヨガを例に、ダイエットのための運動を無理なく続け、その効果を活かしやすくする身体の準備について紹介します。

運動量を増やすだけでは、動きやすい身体にならない
ダイエットでは、消費エネルギーを増やすために「長く走る」「毎日休まず運動する」「苦しいほど効果がある」と考えがちです。
もちろん、身体活動や運動には、健康づくりや体重管理を支える大切な役割があります。ただし、運動の量を増やせば、それに比例して身体をうまく動かせるようになるとは限りません。
たとえば、股関節を動かしにくい状態で走り続けると、歩幅を出すために腰を反らしたり、膝や足首を必要以上に使ってしまうことがあります。また、肩まわりに力が入っていれば、腕を振りにくくなり、呼吸まで窮屈に感じるかもしれません。
それでも走ること自体はできますが、必要な場所を十分に使えないまま距離や速度を上げると、特定の部分へ負担が集まり、フォームを保ちにくくなったり、怪我につながる恐れもあります。疲れや違和感によって運動を続けられなくなれば、結果として継続的な運動量も確保しにくくなるのです。
ダイエットで大切なのは、一度の運動で限界まで消費することではなく、自分に合う負荷で、運動を繰り返しながら、効果を高めていく身体をつくることです。

「使える筋肉」とは、筋肉が大きいことではない
「使える筋肉」という言葉から、筋肉量が多い身体や、重いものを持ち上げられる身体を想像するかもしれません。
しかし、ここでいう使える筋肉とは、やりたい動作をするときに、必要な筋肉を適切な方向と範囲で動かし、ほかの筋肉と連携させられる状態のことを指します。
そのためには、主に次の要素が関わります。
- 動作を支えるために必要な筋力
- 関節を無理なく動かせる可動域
- 必要な筋肉へ力を入れる身体の使い方
- 複数の筋肉を連携させる動作
- 負担が偏りにくい柔軟性
たとえば、スクワットでは太ももの前側だけでなく、お尻や太ももの裏側、上半身を含む体幹なども身体を支えています。どこか一つの筋肉だけを強く使うのではなく、それぞれが役割を分担することで、立つ、しゃがむという動作を安定させやすくなります。
そのため、「筋肉がついているか」だけでなく、目的の動きの中で、その筋肉を使えているかを見ることが大切です。
ランニングでは、脚だけでなく全身の連携が必要になる
ランニングは、脚の筋肉だけで行う運動ではありません。
足首や膝、股関節が動き、体幹が姿勢を支え、腕の振りが全身の動きと連携しています。そして着地する、身体を支える、地面を押して前へ進むという動作を左右交互に繰り返しています。
たとえば、お尻や股関節まわりの筋肉が正しく使えていないと次第に固まってしまい、他の太ももの前側やふくらはぎだけに疲労が偏ることがあります。体幹で姿勢を支えにくい場合は、走るたびに上半身が大きく揺れたり、肩へ力が入り続けたりするのです。
そのため、いきなり走り始める、もしくは走る距離を増やす前に、足首や股関節の動かしやすさ、片脚で身体を支える感覚、体幹と腕の連携などを見直すことが結果的に長く効果的な運動習慣に繋がっていきます。

私もコロナ禍で運動不足だった時に、ダイエットも兼ねてランニングを始めました。しかし、最初は100mも走ることができないくらい、息は上がるし、足は痛くなるしで一時はすぐに挫折をしました。
そんな時に、整体師の夫に出会い、まずは走った時に少しでも身体の動く範囲を増やすよう、マッサージをしてもらいました。さらに、その身体をつくってもらった上で、走る動作や使い方を習いました。すると、不思議なことにどんどん走れる距離が伸びていき、最終的には東京マラソン(42.195km)完走までできるようになったのです。
いかに、この運動を始める前の身体の準備が大切か、この時身をもって知りました。
ヨガは、形にとらわれず身体を支えられるかを見る
ダイエットだけでなく、リフレッシュの一環として日常的にヨガを楽しむ人も多いでしょう。
ヨガは、柔軟性が求められ、見本と同じ深いポーズを取れることが目標になるというイメージがあるかと思います。しかし、形だけを合わせようとすると、本来動かしたい場所ではなく、動きやすい別の場所で動作を補ってしまうことがあります。
たとえば、股関節から身体を倒しにくい状態で前屈を深くしようとすると、腰だけを強く丸めてしまったり、腕を上げにくいのに手を高く伸ばそうとすれば、腰を反らしたり、肩をすくめたりして形をつくることもあります。
ポーズを取れているように見えても、呼吸が止まる、一部だけが痛い、姿勢を保つために強く力むのであれば、今の身体に対して負荷が大きすぎる可能性があるのです。
ヨガには、動かせる範囲で身体を支える筋力や、姿勢を調整する能力も必要です。そのため、今の身体で呼吸と動きを両立できる範囲から始めまるようにしましょう。

使える筋肉を増やす3つの段階
今の身体がどのように動いているかを知る
最初に、立つ、歩く、しゃがむ、腕を上げるといった基本的な動作を行い、今の状態を確認します。
どの方向へ動かしにくいか。左右で動かせる範囲に違いがあるか。どこか一部だけに力が入っていないか。動いている途中で呼吸を止めていないか。こうした点を見ると、自分が使いやすい場所と、十分に使えていない場所が分かりやすくなります。
ただし、自分の身体を横や後ろから見ることは難しく、長年続けてきた動きほど「いつもの動き」として定着しています。そのため、無意識の力みや動きの偏りを、自分だけで見つけるのは困難な場合がほとんどです。
無理なく動かせる範囲をつくる
現在の状態を確認したら、次は動かしにくい部分へ少しずつ動きを戻します。
筋肉の緊張が強い部分や、長い間あまり動かしていなかった部分は、急に大きく動かそうとしても、痛みや強い力みが生じることがあります。無理に伸ばすのではなく、呼吸を続けられる範囲で関節を動かしたり、軽いストレッチを行ったりしながら、動かせる方向を確かめます。
一つ目の自分の身体が今どういった状態になっているかを知ったり、動かせる範囲をつくっていく過程として、整体で身体の状態を確認してもらいながら、マッサージなどを利用するのがおすすめです。
ただし、マッサージを受けただけで、筋肉が継続的に「使える状態」になるわけではありません。一時的に動かしやすく感じられた範囲を、その後の運動や日常動作の中で実際に使うことが必要です。
動かしやすい状態をつくることは準備であり、その範囲を自分で使えるようにすることが次の段階です。

動かせる範囲で、必要な筋肉を使う
最後に、新しく動かしやすくなった範囲の中で、必要な筋肉へ力を入れる練習をします。
たとえば、股関節を動かしやすくしたあとに浅いスクワットを行い、お尻や脚で身体を支える感覚を確かめます。肩まわりを動かしたあとには、肩をすくめずに腕を上げたり、軽く腕を振ったりして、動作を確認します。
そのうえで、ランニングやヨガなど、実際に行いたい運動へつなげます。
ランニングなら、短い距離やゆっくりした速度から始め、着地や脚の運びを確認する。ヨガなら、ポーズを浅くして、呼吸を続けながら身体を支えられる範囲を探す。動作に慣れてきたら、距離、時間、回数、動かす範囲を少しずつ増やします。
ここで大切なのは、可動域を広げることだけでも、筋力を強くすることだけでもありません。動かせる範囲をつくり、その範囲で身体を支え、目的の動作の中で繰り返し使うことです。
PONO SURU SALONでも、身体を一つの形へ矯正するのではなく、現在の状態や取り組みたい運動を確認しながら、その人に合った身体の使い方を一緒に探すことを大切にしています。
ダイエットにも、競技のパフォーマンスにも共通する
ダイエットの成果は、運動だけで決まるものではありません。食事や睡眠、生活全体も関わります。そのうえで運動を続けるなら、消費エネルギーだけを追うのではなく、無理なく動ける身体をつくることが土台になります。
必要な筋肉を連携して使えるようになると、ランニングやヨガの動作を安定して繰り返しやすくなり、自分に合う範囲で運動量や強度を段階的に高めやすくなります。
これは、ダイエットを目的とした運動だけに当てはまることではありません。
より速く走りたい、長く泳ぎたい、競技で安定したフォームを保ちたいという、パフォーマンス向上のためのトレーニングでも同じです。筋力を増やすだけでなく、その筋力を競技の動きの中で適切に使えることが求められます。
トレーニングの量を増やす前に、今の身体でどの筋肉を使えているか、どこへ負担が偏っているかを確認する。それが、ダイエットにも競技にもつながる身体づくりです。

まとめ|まずは運動を続けられる身体をつくる
ダイエットのために運動を始めるとき、大切なのは、最初から距離や回数を増やすことではありません。
やりたい運動に必要な筋肉を動かし、支え、ほかの筋肉と連携させられる状態を少しずつつくることです。
まずは、いつもの運動を始める前に、足首や股関節、肩を軽く動かしてみてください。左右差はないか、どこか一部だけに力が入っていないか、呼吸を続けられるかを確認します。
その日の身体に合う負荷を選び、動作を丁寧に繰り返すことが、運動を続けるための第一歩です。
痩せるためにも、スポーツでよりよい動きを目指すためにも、ただ頑張る量を増やすのではなく、自分の身体を使えるようにしてから、その力を運動へつなげていく。それが、トレーニングを続けるモチベーションにつながります。
長く、楽しく運動を続けて軽やかな毎日を過ごしていきましょう!

